数か月前のことでした。
裏庭でお水を替えていた時、小さな影が「ひゅっ」と動きました。
「あら、何かしら。」
ほんの一瞬の出来事でしたが、小さな命がそこにいることだけは伝わってきました。
かわいらしい、生き生きとした気配。
その時は、それがミッキー君との最初の出会いになるとは思いもしませんでした。
あの日の裏庭は、とても爽やかな朝でした。

鳥さんたちがお水を飲みに来て、リスさんが姿を見せ、小鳥たちは花の種をついばんでいました。
みんながそれぞれの朝を過ごしている、穏やかで美しい時間でした。

私の心に残っているのは、その爽やかな空気と、小さな命のぬくもりだけです。

それから月日が流れ、夏になりました。
ある日、玄関でミッキー君と再び出会いました。
玄関のドアの方へ素早く走る姿を見て、私は思わず、
「だめよ。お外へ出ましょうね。」
と声を掛けました。
玄関を開けて外へ出してあげようとしましたが、驚いたミッキー君は傘の縁へ飛び移り、さらに一瞬のうちに別の場所へ。
その速さは、私の目では追い切れないほどでした。
その頃、わが家では一か月ほど前から、小さな動物の出入りで大騒ぎになっていました。
業者さんが侵入口をふさいだり、忌避剤を置いたり、家族も毎日のように気を配っていました。
私はただ、
「早くお外へ出て行きなさいね。」
と心の中で願うばかりでした。
その後、ミッキー君は二階へ上がり、私の部屋へ来ていました。
部屋には野鳥さんたちのごはんを保管している袋があります。
ごはんを入れ替える時、ほんの少しだけこぼれることがあり、その粒を食べていたのでしょう。
夜になると、部屋の中で、ときどき「カサカサ、カサカサ」と小さな音が聞こえていました。
最初は何の音だろうと思っていましたが、布がわずかに動き、小さな姿が見えたことで、ミッキー君が部屋の中にいることが分かりました。
私は眠ろうとしていましたが、音が気になってなかなか眠ることができませんでした。
すると突然、枕元に置いてあったスマートフォンの画面が、ぱっと明るく光りました。
きっとミッキー君が触れたのでしょう。
私は思わず胸がどきりとしました。
どうしたらいいのだろう……。
でも、慌てて追い回すことはしたくありませんでした。
そこで、スマートフォンで水の流れる音を探しました。
やさしい水音が流れ始めます。
部屋の中では、相変わらず「カサカサ、カサカサ」と小さな音が聞こえていました。
私はその音を追うのではなく、水の流れる音に耳を傾けました。
「朝になったら、きっと何かできる。」
そう自分に言い聞かせながら、水の音を聞いているうちに、少しずつ眠りにつきました。
翌朝、部屋を見回していると、それまで閉まっていると思っていた押し入れの上の戸袋が、ほんの少し開いていました。
「あら、開いていたのかしら。」
そう思った瞬間、ミッキー君は「ひゅっ」と、その戸袋の中へ入っていきました。
私は驚き、思わず戸袋を閉めました。
ところが、その夜になって初めて、天井裏から「カリカリ、カリカリ」という音が聞こえるようになったのです。
翌朝、私は勇気を出して、戸袋を一センチほど、そっと開けました。
そして部屋を出ました。
三十分ほどして戻ると、音は聞こえません。
「出られたのね。」
私はそう思い、安心して戸袋を閉めました。
ところが、しばらくすると、また「カリカリ、カリカリ」という音が聞こえてきたのです。
その直後でした。
小さく「ヒュン」と鳴く声が聞こえました。
私には、その声が「助けて」と言っているように聞こえました。
きっと出口が見つからなかったのでしょう。
外へも出られず、お父さんやお母さんのところへも帰れず、食べ物もないまま、たった一匹で天井裏にいる。
そのことを思うと、このままにはしておけませんでした。
私はもう一度、勇気を出して戸袋を一センチほど開けました。
そして再び部屋を離れました。
一時間ほどして戻ると、天井からの音は、もうまったく聞こえなくなっていました。
「よかった。」
天井裏から出ることができたのだと思い、私は胸をなで下ろしました。
あとは何とか外へ出してあげよう。
その時の私は、ただそのことだけを考えていました。
けれど、その日の夜、思いもよらない出来事が待っているとは、その時はまだ知る由もありませんでした。
(後編へ続きます)

すべてに感謝いたします。
I’m truly grateful