ひなちゃんが親立ちをして、
少し静かになった頃のお話です。
ある日、珍しくひなママが一羽でやって来ました。
ガレージには、
私がそっと置いておいたクッキーが数枚ありました。
一応、三羽分くらい置いてあったのです。
ひなママは、まずその場に落ちている、
くずれた小さな欠片をきれいに食べました。
そして、
形のきれいな一枚を口にくわえると、
どこかへ飛んで行きました。
たぶん、
貯食に行ったのだと思います。
しばらくして、
また戻って来ました。
すると今度は、
その場で大きな声を出して、
ギャーさんを呼び始めたのです。
「ここにあるわよ。」
そんなふうに聞こえるような、
やわらかい呼び声でした。
すると、
ギャーさんがやって来ました。
でも、すぐには食べません。
「これ、食べていいのか?」
そんな感じで、
少し遠慮がちに見ていました。
すると、
あの独特のひなママのカラス語が始まりました。
「キャラグログロ……」
まるで、
「今ここで見つけたのよ。」
「だからすぐあなたを呼んだの。」
「食べていいのよ。」
そんなふうに、一生懸命説明しているようでした。
それを聞くと、
ギャーさんは嬉しそうにクッキーを食べ始めました。
そして二羽は、
また一緒にどこかへ飛んで行ったのです。
私はその姿を見ながら、
ひなママって、
本当に物を大切にする子だなぁ、
と思いました。
きちんとしていて、
やさしくて、
そしてギャーさんにも、とてもやさしい。
見ているうちに、
私はますます、
ひなママのファンになっていきました。
このあと、
ひなちゃんは劇的な形で戻って来ます。
でもこれは、
その少し前の、
ほんの短い静かな時間のお話です。
