ひなちゃんが生まれて、
巣立ちをして、
少し経った頃のお話です。
やっと、
ママとパパと一緒に、
家の庭へ来るようになりました。
でも不思議なことに、
朝早く来るのは、
いつもひなちゃん一羽でした。
パパとママは、
そんなに朝早く来ることはありません。
きっと朝から、
野山や道路を飛び回って、
木の実や虫さんを探して、
一日のお食事の準備をしていたのでしょう。
でもひなちゃんは、
一羽で裏庭へやって来て、
遊ぶようになりました。
バードバスの縁にちょこんと乗ったり、
止まり木のような場所に立って、
水面をじっと見つめたり。
少しお水を飲んだり、
羽をぱたぱたさせたり。
そんなふうに、
自由に遊んでいました。
そしてママは、
少し離れたところに止まって、
ずっとその様子を見ています。
ひなちゃんは、
ママに見守られながら、
本当に安心して遊んでいたのだと思います。
ある時、
庭に小さな丸い石が落ちていました。
でも、
そんな石、
この庭にはないのです。
ふっと思いました。
「あ、これ、
ひなちゃんからのプレゼントなんだ。」
きっと小さなくちばしで、
一生懸命運んできたのでしょう。
見ていると、
ひなちゃんにとっては、
何でも遊び道具になっていました。
長い葉っぱがあれば、
つついてみたり、
引っ張ってみたり。
毎日が、
発見と遊びでいっぱいだったのです。
その頃、
お花屋さんで、
小さな天使の形をした小物入れを見つけました。
本当は、
お庭の飾りとして置いたり、
お部屋の中でアクセサリーを入れたりする、
可愛らしい小物です。
ちょうど蓋がついていて、
中に何か入れられるようになっていました。
私はふっと思いついて、
ひなちゃんがいつも来る場所に、
その天使さんを置いてみました。
そして、
中にクッキーを少し入れて、
蓋をほんの少しだけ、
ずらしておいたのです。
翌朝、
見に行くと、
ちゃんと蓋が開いていて、
中のクッキーがなくなっていました。
「ああ、
ひなちゃん取ったんだなぁ。」
と思いました。
それから毎日、
そうしていました。
ところが、
ある頃から、
天使さんがひっくり返っていたり、
道路の上に落ちていたり、
少しかけていたりするようになったのです。
もうこれは、
天使さんがかわいそうだと思い、
やめることにしました。
たぶんひなちゃん、
蓋を開けることに慣れてしまって、
今度は、
その蓋を飛ばして遊ぶようになっていたのでしょう。
くちばしで、
ぴょんっと空中へ飛ばして、
遊んでいたのだと思います。
そして、
そのたびに、
必ずママが後から追いかけて来ていました。
もともと、
ママはそんなに頻繁に、
この裏庭へ来ることはありませんでした。
でも、
ひなちゃんが来るようになってから、
ママも一緒について来るようになったのです。
ひなちゃんは、
ママに見守られながら、
毎日、
小さな世界を広げていたのでした。
