2018年の夏は、酷暑の年でした。
6月頃からすでに暑くなり始め、9月まで、毎日が猛烈な暑さの連続でした。
そんな真夏の頃、
ひなちゃんは、家の前の電線の上で、毎日「鳴く練習」をしていました。
「ウギャー」と声を振り絞るように鳴きながら、
頭を上下に激しく振るその姿。
少し離れたところには、
ハシボソガラス の
ギャーさんと、ひなちゃんのママがいて、
静かにその様子を見守っていました。
そんなある日のことです。
電線の上にいたのは、
ママとひなちゃんの二羽だけでした。
ひなちゃんは、いつも以上に一生懸命に鳴く練習を続けています。
ママが場所を移そうとしても、まだここで練習したいとばかりに動きません。
その姿を見ながら、ふと思いました。
「ギャーさんは、何をしているのだろう」
責任感の強いギャーさんのことです。
きっと、何か意味があるのだろうと思っていました。
そして、その日の午後。
突然、ひなちゃんが「ギャー」と叫びながら、
私の部屋の窓の外を猛スピードで通り過ぎました。
その先には——ギャーさんの姿。
なんと、飛行の訓練をしていたのです。
ギャーさんが先を飛び、
ひなちゃんが必死に追いかける。
そのスピードは想像以上で、
まるで空中を駆け抜けるような勢いでした。
「そうか、飛び方を教えているんだ」
思わずそう感じました。
ギャーさんの飛行は、本当に見事でした。
低く滑るように飛び、
弧を描くように降りてきて、
狙った場所にぴたりと着地する。
買い物から帰る私の後ろを、
肩すれすれに飛んできて、
門のフェンスに先回りしてとまることもありました。
声はしゃがれていて、
どこかおっちょこちょいなところもあるのに、
飛行だけは群を抜いていました。
まだトントンと飛ぶのがやっとだったひなちゃんにとって、
この日の訓練は大きな一歩だったのだと思います。
父親として、伝えられることを、しっかりと伝えていたのでしょう。
その日の午後は、そのあととても静かでした。
きっとひなちゃんは、
今日の練習に満足して、
パパとママと一緒にどこかで過ごしていたのでしょう。
同じ頃、別の日のことです。
コンビニへ向かう途中、
別のカラスの親子三羽を見かけました。
親鳥が、子どもに高い場所へ行くよう促し、
そこから飛び立つように教えている様子でした。
子どもは戸惑いながらも、
じっとその場で考えているようでした。
その光景を見て、
どの親子も同じように、
この季節に、少しずつ生きる術を教えているのだと感じました。
厳しい暑さの中での子育て。
飛び方も、餌の取り方も、
すべて教えなければ、生きていくことはできません。
だからこそ、親鳥たちは懸命なのです。
そんな夏の一場面。
飛行を得意とするギャーさんが、
全力で教えていたその姿は、
とても印象的で、そしてかっこいいものでした。
ひなちゃん、
素敵なパパで本当によかったね。
ひなちゃんの成長の中の、
忘れられない一日の記録です。

