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ひなちゃんのはじめてのクッキー

2018年、もう夏に入った頃のことです。

ひなちゃんは、パパとママと一緒に、昼間でもよく遊びに来ていました。

でもこの頃になると、ひとりで遊ぶこともできるようになっていました。

家の前には駐車場があります。

前のお宅の駐車場なのですが、よく鳥たちがそこで遊んでいます。

あるとき、ひなちゃんが一羽で来ていました。

裏庭からクッキーをひとつ取って、

それをくわえたまま駐車場へやってきました。

おそらく、自分で食べ物を取る行動は、このときが初めてだったと思います。

そこへ、パパのギャーさんがやってきました。

ひなちゃんのくちにあるクッキーを見て、

「それ、どうしたんだ?」と聞いたようでした。

まだこの頃は、ひなちゃんはパパとママから餌をもらっている時期です。

ひなちゃんはクッキーを地面に置いて、

「これ、ぼくが自分で取ったの。すごいでしょ。

 ぼくのクッキーなんだよ、パパ」

そんなふうに言っているように見えました。

するとギャーさんは、「へえ」というような様子で――

なんと、そのクッキーを食べてしまったのです。

さあ大変です。

ひなちゃんは猛烈に怒りました。

羽をバタバタさせて、口を大きく開けて、

「ウギャー、ウギャー!」と大きな声で抗議します。

ギャーさんは、少しうるさそうな顔で立っています。

しばらくすると、ひなちゃんがパパを追いかけ、

ギャーさんは逃げて、駐車場で二羽の追いかけっこになりました。

すると突然、ギャーさんが

駐車場の端の草むらへとトントントンと歩いていきました。

そして、その中から何かを取り出します。

それは、クッキーでした。

(カラスには「貯食」という習性があり、

食べ物をいろいろな場所に隠しておき、あとで取りに来るのです)

ギャーさんは、そのクッキーを持って戻り、

「ほらよ」というように、ひなちゃんの前に置きました。

ひなちゃんは

「わあ、よかった!これ、ぼくのだ!」

そんな様子で、すぐにごきげんになりました。

そして、ルンルンしながら、そのクッキーをくわえています。

しばらくすると、ひなちゃんはふと考えたようでした。

「そうだ。ママやパパみたいに、ぼくも隠すんだ」

そう思ったのでしょう。

駐車場の大谷石の継ぎ目あたりをじっと見つめ、

そのあたりにクッキーを差し込んだようでした。

とても得意そうな様子で、そのまま飛んでいきました。

少ししてから、ママがやってきました。

駐車場に何か気配を感じたのでしょう。

ぐるっと周りを見回しています。

そして、ぴたりと目が止まりました。

ひなちゃんが隠したクッキーの場所です。

首をかしげながら、

「どうしてこんなところにあるのかしら?」

そんなふうに見ているようでした。

ママはとても几帳面で、食べ物を大切にするカラスです。

すっと近づいて、そのクッキーをぱっと取り、

そのまま食べてしまいました。

そして、またどこかへ飛んでいきました。

それを見ていて、私はおかしくてたまりませんでした。

ひなちゃんはきっとあとで戻ってきて、

「ぼく、ちゃんと隠したんだ」

そう思って探したことでしょう。

でも、もうありません。

誰が取ったのかも、わからないままです。

こんなこともあるんだなあと、

きっとひなちゃんにとって、大事な経験になったと思います。

それにしても、ギャーさんは本当におもしろいです。

わざわざ息子のクッキーを食べてしまい、怒られて、

そのあと自分の貯めていたものを返すように持ってくる。

少しおっちょこちょいで、思いついたらすぐ行動してしまうけれど、

やっぱり心はやさしくて、ちゃんと息子に返してあげる。

そんなところが、とても魅力的です。

このようなやりとりは、ママとの間でも見たことがあります。

ギャーさんは、本当に憎めない、

きれいな心を持ったカラスさんです。

ギャーさん、公園で。
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